大神神社社務所で毎月発行されている「かぎろい」に、青人草という言葉が紹介されていました。青人草(あおひとくさ)と読みます。
青人草とは、簡単に解釈すれば国民を意味する古語です。
人が増えていく様子を草が生い茂っていく様に例えています。草が青々と茂る、あるいは草の緑を青いと表現することがよくあります。人の場合はどうでしょうか? 青い人と言えば、青二才に代表されるように未熟な人を表すときに使われます。青人草という言葉からは、未来へ向かってどんどん成長していくイメージが膨らみます。
大神神社儀式殿前に咲く獅子頭(ししがしら)。
国民の古名を、民草(たみくさ)と言ったりすることもあります。
旺盛な繁殖力を想像させる草には、国が栄えることへの期待も込められているのではないでしょうか。
今年は古事記編纂から数えて1300年目の節目を迎えます。
古事記に出てくる青人草という言葉。
ここに原文をご紹介しておきます。
「汝(なれ)、吾(あ)を助けしがごとく、葦原の中つ国にあらゆる現(うつ)しき青人草の、苦しき瀬に落ちて患(うれ)へ惚(なや)む時に助くべし」。
うつしき青人草と出ていますね。
現し(うつし)とは、現存している、現実のといった意味を持つ古語です。
伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が黄泉の国から逃げるとき、追っ手を振り切るために邪気を祓うという桃の実を投げます。追っ手は桃の実のパワーによって、以後は追い掛けるのを諦めたと伝えられます。この時、伊邪那岐命は「自分を助けたように、人々が苦しむときは同じように助けよ」と桃に命じます。
桃の霊力、恐るべしですね。
卑弥呼の宮殿跡と言われる場所からも、膨大な数の桃の種が出土しています。陰陽師・安倍晴明を祀る京都の晴明神社には、厄除けの桃が飾られています。青人草である私たち一人ひとりは、イザナギノミコトの言葉によって今もなお守られているのかもしれません(笑)
蒼生(そうせい)、蒼氓(そうぼう)といった言葉も思い浮かびます。
どちらも国民を意味する言葉ですが、「蒼い(あおい)」という漢字が入っていますよね。古来より連綿と受け継がれる五穀豊穣、子孫繁栄の願いに、改めて気付かされたような気が致します。
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