桜井市茅原に鎮座する神御前神社のすぐ北側に、大神神社末社の富士・厳島神社が鎮まります。
富士神社の御祭神は、富士の浅間神社にも祀られる木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)です。山の神として知られる大山祇神(おおやまつみのかみ)の娘に当たるコノハナサクヤヒメ。山の精霊の御子が、神体山である三輪山の麓に祀られていることに、何か必然的なものを感じます。
富士・厳島神社。
向かって右側に富士神社、左側に厳島神社が祀られています。
大神神社は大晦日から元旦にかけての火祭りで知られますが、富士神社の御祭神である木花咲耶姫にも火のイメージが付きまといます。
燃え盛る火の中で子供を産んだ木花咲耶姫。なぜ火の中で子供を産まなければならなかったのか?その理由が木花咲耶姫にまつわるエピソードの中に隠されています。
皇孫と結ばれた木花咲耶姫は、一晩にして妊娠することになります。これに対し、身ごもらせた方の皇孫は「いくら何でも、たった一晩で懐妊するのはおかしい。あなたが孕んだのは、私の子ではない」と疑いの目を向けます。無責任な皇孫の態度を恨んだ木花咲耶姫は、無戸室(うつむろ)という人の出入りの出来ない家を造って、その中で誓約(うけい)をします。
誓約(うけい)とは、古語における動詞ウケフの連用形で、神に祈って成否や吉凶を占うことを意味します。
三輪山の麓のこの辺りは、占いの場所として知られる神浅茅原(かむあさぢはら)に当たるのではないかとも言われます。神に問って、その後の行動の指針にするわけですね。
境内の北側に、祠の中に納められた石仏が佇みます。
観音様なのでしょうか、下の方にも小さな仏様の姿が見られます。
木花咲耶姫は祈りの中で、「私が孕んだ子が、もし天孫の子でなければ、必ず焼けて滅びるでしょう。もし本当に天孫の子であるならば、火もその子を痛めつけることはないでしょう」と言って、部屋に火を放ちました。
そうして三人の子が無事に生まれ、その中の二番目の子の末裔が天皇家であると伝えられます。こうした逸話からも、木花咲耶姫は安産の神であるとも言えます。
火の中で子供を産むという、何やら逞しい木花咲耶姫は美人であったとも伝えられています。
火山の富士山に、火祭りの三輪山。
大神神社で結婚式を挙げた後は、ここ富士神社に安産祈願に訪れるのもいいですね。
富士・厳島神社の北に位置する茅原大墓古墳の墳頂から三輪山を望みます。
富士神社と並んで祀られる厳島神社の御祭神は市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)です。
市杵島姫といえば、水にまつわる弁天さんのイメージがあります。大神神社の摂社として知られる狭井神社の手前にも祀られていますよね。市杵島姫命はアマテラスとスサノヲの誓約(うけい)によって生まれた宗像三女神の一神とされます。
茅原の集落にひっそりと佇む富士・厳島神社。
大神神社参拝の際は、是非一度足を運んでみられてはいかがでしょうか。
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