奈良の八坂神社(祇園社)にて、古い時代の建物に多く見られるという猪目懸魚(いのめげぎょ)を見つけました。
猪目懸魚。
ハート型の穴が空いているのが特徴です。
この穴を猪の目に見立てたのが、猪目懸魚の名前の由来となっています。
懸魚とは、神社仏閣の屋根に取り付けられた妻飾りのことをいいます。
懸魚という名前の通り、元々は魚がデザインされています。屋根の破風板に吊り下げられた魚の尾びれのようなものをご覧になられたことがあるのではないでしょうか。
懸魚の役割は木造建築を火災から守ることにあります。
そう、一種のおまじないですね。
水に深い関わりのある魚が意匠として使われているわけです。
知恩院の河童、高台寺の開山堂龍図などにも火難除けの願いが込められていますが、寺社建築の中でも目にする機会の多い懸魚にも同じ意味が込められていたんですね。
生活になくてはならない”火”ですが、扱い方を誤ると取り返しのつかない大変なことになります。
懸魚という漢字を分解すれば、「魚を懸ける」という意味になります。
魚を懸ける → 水を掛ける という連想が働きます。
祇園社と同じ通り沿いにある天平倶楽部さんから子規の庭を撮影。
奈良の祇園社は、東大寺の鎮守神である手向山八幡宮の末社に当たります。
奈良国立博物館を北へ600mほど行った所にあり、バス停今小路下車でアクセスすることができます。住所が押上町なので、押上祇園社とも呼ばれています。
なら仏像館前で休憩する奈良公園の鹿。
懸魚にも色々な形があって、猪目の他にも蕪(かぶら)、三花(みつばな)、梅鉢(うめばち)などが知られます。
奈良観光の際には、寺社建築の意匠に目を凝らしてみるのもおすすめですね。
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