団体旅行で当館にご宿泊頂いたお客様の今回の目的地は、大神神社、長谷寺、それに橿原神宮近くの久米寺でした。久米寺は真言宗発祥の地とも言われ、真言宗御室派の仁和寺別院として知られます。
仁和寺といえば、金閣寺で知られるきぬかけの路沿いに建つ大寺院です。紫陽花のお寺のイメージが強い久米寺ですが、仁和寺と深い関係にあることをご存知の方はそう多くはないのではないでしょうか。仁和寺の広大な境内に比べれば、久米寺の寺域はこぢんまりと小さくまとまっています。
久米寺本堂。
本堂内には、ご本尊の天得薬師瑠璃光如来坐像が安置されています。
団体旅行のご宿泊御一行様が大神神社や長谷寺へお参りされることはあっても、久米寺にお参りされるのは今回が初めてでした。久米寺はちょっと入り組んだ場所に位置しており、団体旅行のルートとしては穴場的な存在です。
久米寺の護国道場。
仁王像の立つ山門右手にある建物です。本堂と向き合う形で、久米寺の境内に開けています。毎年5月3日に執り行われる久米レンゾと呼ばれる練供養の際には、この道場が活躍します。
練供養の前日になると、本堂にあたる金堂と護国道場の間に板橋が架けられます。普段は金堂に安置されている久米仙人の像が護国道場に移され、レンゾの準備が整います。
練供養当日の朝から、護国道場において住職以下僧侶20数人が大般若経を唱えます。そしていよいよ、午後3時からお目当ての「お渡り」が始まります。
護国道場の玄関口。
「合掌」の文字が見えますね。
護国道場から本堂へ向かって、信者や僧侶、二十五菩薩に扮した男性たちが板橋を練り歩きます。久米レンゾは、久米寺が一年の内で最も賑わう日なのかもしれません。
久米寺の絵馬。
飛行術を習得したとされる久米仙人が描かれていますね。
百数十年間にも及んで久米寺に居住していたと伝えられる久米仙人。飛行中に吉野川で洗濯をしていた娘さんの白い足に目がくらんでしまいます(笑)色香に負けた久米仙人は、そのまま墜落してしまったと伝えられます。
嘘のような面白いエピソードですが、今昔物語集や徒然草にも引かれている有名な故事として知られます。仙人も色気には負けてしまうのですね。完璧ではない仙人の姿に好感を抱きます。
真言宗といえば、弘法大師空海です。
久米寺の山門を入った右手に大師堂があり、その手前に弘法大師石が鎮まります。石の表面には、何やら梵字のようなものが刻まれています。
久米寺の大師堂。
大同2年(807)に、弘法大師が宝塔内で弟子たちと真言密教を宣布したと伝えられます。歴史は流れ、現在の久米寺は真言宗御室派の別格本山として栄えています。
久米寺の多宝塔。
久米寺のシンボル的存在の多宝塔は、国の重要文化財に指定されています。
インドのマガダ国から、王位を捨ててはるばる来日した善無畏三蔵(ぜんむいさんぞう)。久米寺に滞在し、三粒の仏舎利と大日経を納め、日本最初の多宝塔を建立したと伝えられます。久米寺の多宝塔には、お釈迦様の御遺骨が納められているんですね。
久米寺の多宝塔は、逆光になったり、前の草木が邪魔をして上手に撮れないことが多いのですが、今回はそこそこの出来栄えです。二層の多宝塔に光が当たって、神々しく撮れているのではないでしょうか(笑)
本堂向って左手前に建つ久米仙人像。
中風除け祈願のお寺として有名な久米寺ですが、その有り難いご利益も久米仙人に端を発しています。
久米仙人は中風や下の病を取り除くため、我が身を映した像を本尊の薬師如来に誓いを立てて造り、その像に自分の髪の毛、歯、肉をとどめて昇天したと伝えられます。
仁王像が睨みを利かせる久米寺の山門。
15台ほど停められる駐車場が山門の右手にあります。近鉄橿原神宮前駅からのアクセスは、徒歩で5分ぐらいでしょうか。奈良が誇る真言宗発祥の地を、この機会に是非おすすめしたいと思います。
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