桜の見所がまた一つ増えているのをご存知でしょうか。本堂前で見頃を迎えた、その名も「仲麻呂望郷しだれ桜」。多くの花見客が、美しい枝垂桜の周りで観賞に耽っていました。
本堂前に咲く仲麻呂望郷しだれ桜。
安倍文殊院の境内には500本の染井吉野が開花しますが、その中でも一際注目を集めていました。仲麻呂望郷しだれ桜は、東吉野村の桜の名所である高見の郷より奉納植樹されています。
日本有数の桜の名所である吉野の桜が植樹されています。
枝垂桜の横に何かをくり抜いたような石が置かれていました。不思議に思って、境内を歩いておられた袈裟姿のお坊さんにお尋ねしたのですが、元はお地蔵さんが納められていた祠石であるとのご回答を頂きました。歴史のあるお寺なので、このような石が残されていたということです。
歴史を感じさせますね。
阿倍仲麻呂の有名な歌の石碑が浮御堂の前にあります。
「天の原 振りさけみれば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」 遣唐使として中国へ渡った仲麻呂が、帰りたくても帰れない故郷を偲んで歌った詩として知られます。この石碑の建立と同じ年に、樹齢30年の高見の郷のしだれ桜が奉納されました。
私たち日本人は「しだれる美」に弱いところがあります(笑)
枝垂桜に藤の花、さらにはたわわに実った葡萄の実。
注連縄と共に垂れ下がる紙垂(しで)も、風に揺られながら結界を結んでいます。
安倍文殊院参拝の後、車を走らせて飛鳥寺まで行ったのですが、飛鳥寺の境内にも垂れ下がるレンギョウの花が満開を迎えていました。こぼれんばかりに垂れ下る花の美しさに、思わず見とれてしまう自分に気付かされます。
アマチュアカメラマンでしょうか。
境内のあちこちで満開の桜の花を撮影しておられました。
本堂前に多数の絵馬が掛けられ、ぼけの花と桜の花の競演を見ることができます。
ぼけ封じ霊場としても知られる安倍文殊院。
花のみてらと称される長谷寺にも負けないぐらいの百花繚乱の花絵巻です。
仲麻呂望郷しだれ桜と文殊院西古墳。
特別史跡に指定されている古墳が、安倍文殊院の境内に佇みます。
標高650mの山頂付近を切り開いて造られたと言われる高見の郷。
「天空の庭」と呼ばれる桜の名所で、約1,000本の枝垂桜が植えられています。天空の庭から安倍晴明生誕の地へやって来たしだれ桜です。
2013年4月1日エイプリルフール当日の仲麻呂望郷しだれ桜。
入学式や入社式も各地で行われている日ではないでしょうか。別れのシーズンから出会いの季節がやって参ります。遥か離れた故郷への思いを募らせる仲麻呂の心情が、しだれ桜のしだれ具合によく表れています。出会いがあれば別れがある。人生の節目の心模様を表現して余りある桜の姿にしばし見入ります。
国宝指定に湧く文殊菩薩像が本堂内に安置されています。
今春は例年以上の参拝客が詰め掛けているのではないでしょうか。
仲麻呂望郷しだれ桜も、ご本尊の国宝指定に華を添えます。
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