水辺に生えることで知られる杜若(かきつばた)。
観光トップシーズンのGWも過ぎた5月半ばに、杜若の名所として名を馳せる長岳寺を訪れてみました。楼門をくぐって境内に入ると、本堂前の放生池東側で杜若の花が見頃を迎えています。
長岳寺の杜若。
濃い紫色をした美しい花です。
日本最古の玉眼仏を安置する本堂の前に、カキツバタの紫とオオデマリの白がよく映えます。
杜若の原産地は我が国日本です。
アヤメ科の植物で、英名を rabbit ear iris と言います。美しく垂れ下った花びらがウサギの耳を連想させるのでしょうか。かねてから杜若と菖蒲(あやめ)、それに花菖蒲(はなしょうぶ)の見分け方が分からなかったのですが、ここでその違いを復習しておきたいと思います。
菖蒲は花びらの付け根が黄色く、紫色の綾目模様が入っているのが特徴です。水辺に咲く杜若とは違い、水はけのよい土地を好む乾燥に強いタイプの植物として知られます。一方の杜若は水辺を好み、花びらの中央には白い筋が入っています。花菖蒲はアヤメ科の中でも一番大きく華やかで、花びらも幅広く、その中心には黄色い筋が見られます。
長岳寺楼門。
日本最古の鐘楼門として重要文化財に指定されています。
天理市トレイルセンターの駐車場に車を停め、長岳寺の肘切門を抜けて参道を進みます。参道両脇の平戸つつじは既に見頃を過ぎてしまっていました。拝観受付で350円の拝観料を納め、花の開花状況をお伺いすると、つつじは枯れてしまっているけれど、本堂前の杜若は見頃を迎えているとのことでした。
拝観受付からも見える鐘楼門は長岳寺の歴史そのものです。
長岳寺創建当初から残る唯一の建物とされるだけに、その価値は誰もが認めるところではないでしょうか。
鐘楼門の手前左側に、庭園を擁する旧地蔵院本堂があります。
普賢延命菩薩をご本尊とする庫裏の持仏堂です。
オオデマリとカキツバタの風景。
ゴールデンウィーク前に訪れた長谷寺境内にも咲いていたオオデマリ。まだ白くなる前の黄緑色の状態でしたが、眼前に咲くオオデマリはすっかり白く色付いています。
放生池の畔に咲くオオデマリを撮影しようとして、足元のぬかるみに足を取られそうになったのはご愛嬌でした(笑)
残念ながらツツジはもう終わりですね。
花の散り際に出会えただけでもラッキーでした。
杜若の乱舞。
大師堂へ続く石段の脇から放生池沿いに南へ進みます。この場所からだと、杜若をより近い距離で観賞することができます。背景に本堂を入れたり、あるいは鐘楼門を入れてみたりと色々な構図を楽しむことができます。
本堂内に安置される長岳寺の多聞天。
向こうに見えているのが、阿弥陀三尊の中尊・阿弥陀如来像です。フラッシュ無しの撮影であればOKとのことでしたので、お手を合わせて撮影させて頂きました。
杜若の蕾ですね。
杜若に限らず、開花のタイミングを待つ蕾はいいものですね。鳥のくちばしのように二つに閉じた蕾から、濃紫色の花びらが姿を現しています。
弘法大師を祀る大師堂の前に佇む拝堂。
本堂を見降ろす一段高い場所にお堂が建ちます。此処から裏の山手へ入って行くと、大石棺佛や石の祠に納められた多数のお地蔵さんを見ることができます。「長岳寺へんろ道」と書かれた札を所々で見かけましたが、家に帰ってパンフレットを確認すると、「八十八ヶ所道」というふうに案内されていました。
長岳寺へんろ道のお地蔵さん。
無数の祠が延々と山道に続いていました。どこまで続いているのだろう?と少し歩いてみたのですが、さすがに時間が気になって引き返すことになりました。
杜若を真上から見ると、こんな感じです。
三つに分かれているんですね。
昔の人は杜若の花を布に擦りつけて染める習慣があったと伝えられます。杜若の名前の由来も、「かきつけ花」からきているそうです。染料として使われていた時代があったとは知りませんでした。さぞ、高貴で美しい紫色に染まったことでしょう。
長岳寺の宗派は高野山真言宗。
関西花の寺第十九番霊場、大和十三佛大四番霊場として多くの観光客で賑わいます。
当館大正楼からのアクセスは、国道169号線経由でわずか10分ほどです。
公共交通機関をご利用の場合は、JR柳本駅より徒歩20分です。JR・近鉄桜井駅、天理駅からだと、バス上長岡下車徒歩10分となっています。
お問合わせ窓口 ; TEL 0744-42-6003