山の辺の道の長岳寺境内に見られる「南無大師遍照金剛」という言葉。
そこには遍く照らす慈悲の心や、固く揺るがない信仰心が読み取れます。釜ノ口山長岳寺の宗派は高野山真言宗で、弘法大師空海が創建したお寺として知られます。
大師堂拝殿の中に「南無大師遍照金剛」の文字が見えます。
本堂前に広がる放生池の近くで杜若やオオデマリ、それにカラーの花を楽しんだ後、石段を登って弘法大師像が祀られる大師堂へと足を運びます。
南無大師遍照金剛の南無は、南無阿弥陀仏と同じく帰依や帰命を意味します。大師は弘法大師空海のことですね。遍照金剛(へんじょうこんごう)とはお大師様の潅頂名であり、空海が唐に留学した際、恵果和尚から頂いた称号です。
拝堂前の西側に「遍照」と刻まれた石灯籠が建っています。
遍く照らすとはまるで、あらゆる手段を尽くして衆生をお救い下さる観音菩薩の慈悲を感じさせます。千手観音や十一面観音に見られるように、一人残らず遍く衆生を救うために姿を変える観音様。この辺りでは聖林寺の国宝・十一面観音菩薩立像がよく知られるところですが、とてもお優しい雰囲気に満ちています。
そう言えば、長岳寺本堂の阿弥陀三尊像の脇侍にも観世音菩薩像が祀られています。
長岳寺拝堂。
南無大師遍照金剛とは、ただ単にお大師様に帰依してそのお慈悲にすがるだけではないものと思われます。金剛はダイヤモンドであり、その揺るぎなき信仰の決意が感じられます。磨けば光るダイヤモンド、その原石をひたすら磨き続けることによってのみ、ある到達点に達するのではないでしょうか。
長岳寺に隣接する天理市トレイルセンター。
植え込みの花は美女撫子(びじょなでしこ)でしょうか。
ご年配のハイカー御一行様が、賑やかに談笑しながら休憩しておられました。
長岳寺の石仏の赤い前掛けにも、「南無大師遍照金剛」と書かれていますね。
お念仏のように唱えることによって、弘法大師空海と共にある自分を再認識するのでしょうか。四国八十八カ所のお遍路でもお馴染みの唱え文句となっています。
拝堂前のカエデ。
その葉っぱの形状が蛙の手を思わせるところから、” 蛙手→カエデ ” に転訛していったと言われます。初夏の5月に訪れた長岳寺境内では、カエデの種も確認することができました。
拝堂の背後に連なるように佇みます。
この建物が大師堂なのでしょうか。拝堂の横から裏手へ回り込めば、拝見することができます。
長岳寺本堂。
杜若やオオデマリが初夏の薫風になびいています。
鐘堂の裏手に連なる石仏群。
参拝順路の最後の方で、こぢんまりとした石仏たちが出迎えてくれます。
長岳寺拝堂の前に立ち、弘法大師空海のことを思います。
全国津々浦々、どこのお寺にもいらっしゃる弘法大師空海。真言宗のお寺に限らず、様々な宗派のお寺で弘法大師空海を見ることができます。それだけ長い歴史に渡って信仰され続ける空海の偉大さを改めて思います。
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