被葬者が不明とされる藤ノ木古墳。
豪華な副葬品が多数出土したことで知られる古墳ですが、その出土品が橿原考古学研究所附属博物館に展示されていました。「美酒発掘」と題する秋季特別展の招待券が届いていたので、仕事の合間を縫って橿原神宮近くにある博物館を訪れて参りました。
国宝に指定される藤ノ木古墳出土の金銅製沓。
ボランティアの方の案内で館内を回り、中庭の埴輪にカメラを向けていると、館内から係の方がいらっしゃって、「どうぞ館内のお写真もお撮り下さい」と促して下さいました。てっきり館内撮影は全て禁止されているのかと思いきや、展示物の前に撮影禁止の札が無い展示品に関しては、全て撮影の許可が下りているとのこと。お礼を申し上げて、再び常設展示室の方へ足を向けました。ちなみに、特別展示室の方は全館撮影禁止となっています。
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館の中庭にあった円筒埴輪。
メスリ山古墳の周囲に巡らされた円筒埴輪のガイドを聞いたばかりだったので、埴輪の中でも一番最初の形とされる円筒埴輪に興味が湧きます。
埋葬されていた当時は金色に輝いていたそうです。
法隆寺の西にある藤ノ木古墳へは2、3度訪れたことがあります。直径が48mもある6世紀後半の円墳です。そんな時代の副葬品を目の前にして、気の遠くなるほどの時の流れを感じます。
沓の下には鏡が敷かれていて、沓の裏側も拝見することができます。
沓の裏側にもひらひらとした装飾が見られることから、実用的な沓ではなかったことが推測されます。権力を象徴する副葬品だったのでしょうか。あるいは呪術的な意味合いがあったのか、今となっては知る由もありません。
藤ノ木古墳近くにある斑鳩文化財センターを見学して、靴に付いているヒラヒラは歩搖(ほよう)と呼ばれる装飾品であることが分かります。
巫女の呪術風景でしょうか。
平伏す民の前で、天を仰ぎ両手を広げて鳥のようなポーズを取るシャーマンの姿が再現されています。絵画土器には、両手を広げた人物像が数多く描かれています。この再現模型の手前にも、呪術を施すシャーマンの姿と思しき土器の絵が案内されていました。
藤ノ木古墳から出土した石棺の中からは二体の人骨が見つかっています。
なぜ二人の人物が同じ石棺の中に葬られたのか?謎は深まるばかりです。その石棺の中には、金銅製沓の他にも、金銅製冠や金銅製鏡も入れられていました。
三日月形の金銅製鞍金具や、馬具の装飾品である棘葉形杏葉(きょくようけいぎょうよう)も出土しています。それらの全てが、ここ橿原考古学研究所附属博物館に収蔵されています。
奈良県立橿原考古学研究所附属博物館。
開館時間は午前9時から午後5時(入館は午後4時30分まで)となっています。
最寄駅は近鉄畝傍御陵前駅で、駅からは徒歩5分くらいでしょうか。
橿原神宮前駅からも徒歩圏内で、約15分でアクセスすることができます。昔の橿原球場(現佐藤薬品スタジアム)を左手に見ながら、散策がてら歩いて行くのもいいですね。
沓には黄金の面影は既に見られませんが、馬具などは往時を偲ばせるゴールドの輝きが今も残っています。これだけの物が今に蘇るのはなぜなのか? ボランティアガイドの方に伺ってみたら、どうやら長い間空気に触れていなかったのが原因ではないかとおっしゃっていました。
発掘当初は水に浸かっていたそうです。
盗掘の跡が見られない稀有な存在として知られる藤ノ木古墳。
幸運にも恵まれ、今も橿原考古学研究所附属博物館の展示品として、私たち入館者の目を魅了し続けています。今回の博物館見学の中でも、最も輝いていた展示品の一つであることに間違いはありません。
<橿原考古学研究所附属博物館の関連情報>
お問合わせ窓口 ; TEL 0744-42-6003