長岳寺の放生池の東側に十三重石塔が建っています。
参拝順路からいえば、大師堂から鐘堂へ向かう途中の右側に位置します。鎌倉時代の十三重石塔は、西大寺中興の興正菩薩叡尊の供養塔と伝えられます。
長岳寺の十三重石塔。
一番上の十三層目が欠けており、現在は十二層の石塔になっているようです。七層目から十層目辺りが歪んでおり、独特の形状を保っています。まるでピサの斜塔を思わせますね。
興正菩薩叡尊(こうしょうぼさつ えいぞん)は律宗の僧で、蒙古襲来においては神風を祈願したことで知られます。
長岳寺の放生池に泳ぐ鯉。
向こうに見えている青い花は、長岳寺の初夏を彩るカキツバタです。
貧民・病人の救済や殺生禁断に功績があったと伝えられる叡尊。放生池の畔に建つ十三重石塔は、叡尊を供養するにふさわしい場所のような気が致します。
初層の基軸部分に何か彫られていますね。
長岳寺の小冊子によれば、叡尊ゆかりの文殊菩薩が刻まれているそうです。
ツツジの花がわずかに残っていました。
高野山や長岳寺で真言密教を学んだ叡尊は、次第に戒律重視の必要性を感じるに至り、戒律仏教に近づくようになります。36歳の時に、東大寺戒壇院にて自ら仏に誓いを立て、自誓授戒(じせいじゅかい)を受け、その後大和を中心に活発な宗教活動を行ったとされます。
若き叡尊は長岳寺で学んでいたんですね。
十三重石塔の13という数字には何か意味があるのでしょうか?
十二支や十二星座と言うように、12という数字には完成形というか、何やら宇宙の摂理のようなものが感じられます。その12を超えた13という数字。未知なる不可思議の世界へと入っていく扉。その扉を開いた先に13という数字があるのではないでしょうか。
長岳寺本堂。
12で切れてしまっている十三重石塔。
全くの個人的見解ではありますが、何やら意味深なものを感じますね。
十三重石塔の傍らに置かれていました。
本来は一番上に乗っかっている部分なのでしょうか?
長岳寺の境内には無数の石仏が佇みます。
十三重石塔から裏手の山へ登って行くと、身の丈2mほどの弥勒大石棺仏を拝観することができます。
興福寺の五十二段にも意味があったように、十三重石塔の十三にも深い意味が込められているものと思われます。コスモスの名所で知られる般若寺の十三重石塔はその巨大さで群を抜いています。藤原不比等のお墓ではないかと伝えられる談山神社の十三重石塔もおすすめです。
宇宙の摂理を超えた領域にそびえる十三重石塔。
そういう解釈をしてみるのも、奈良旅行の醍醐味の一つではないでしょうか。
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