涼やかな虫の音も聞こえるようになり、秋の気配が感じられるようになりました。
安倍文殊院のコスモスが気になって境内へと足を向けます。安倍晴明を祀る晴明堂の如意宝珠に、羅刹天(らせつてん)という言葉を見つけました。
如意宝珠に記された羅刹天。
羅刹天とは何を意味する言葉なのでしょうか?
羅刹天は四天王の一角である多聞天(毘沙門天)に夜叉と共に仕える神です。十二天の一つに数えられ、西南を守護する神様として知られます。十二支における未申の方向を守る神様のようです。
陰陽師・安倍晴明を祀る晴明堂。
安倍晴明生誕の地とも伝えられる安倍文殊院ですが、そのことをご宿泊頂いたお客様にお伝えすると、安倍晴明が生まれた場所は京都の晴明神社ではないのですか?というお声が返って参ります。確かにそうなのかもしれません(笑)生誕の地論争というものは、なかなか解決の糸口が見つかりにくいものなのかもしれません。
安倍文殊院の境内から南西方向にある安倍寺跡。
さるすべりの花も既に見頃を過ぎてしまっているようです。
金閣浮御堂前の拝観受付窓口。
羅刹(らせつ)は古代インド神話における鬼神で、梵名をラクシャス、またはラクシャサと言います。大力で足が速く、人を食うと言われ、破壊を司る神や鬼の主尊として知られます。なんだか恐ろしい神様のようですね。
そんな悪鬼も、後に仏教に入り、守護神として崇められた経緯があります。
興福寺国宝館に安置される阿修羅像も、その昔は悪神であったと伝えられます。物憂げなその姿に、改心して帰依した歴史が窺えます。人を食う鬼神から守護神へと、見事に変身を遂げた羅刹天。甲冑を身に付けて刀を持ち、白獅子に乗った羅刹天の姿は、どこか安倍文殊院のご本尊・文殊菩薩像にも似ています。
安倍文殊院の如意宝珠。
本日の9月19日は中秋の名月です。真ん丸な如意宝珠を見ていると、満月の姿を想像せずにはいられません。羅刹天~未申~月天のつながりは単なる偶然なのでしょうか。
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